企業や団体の歴史を刻む!魅力的な記念誌の作り方と成功のポイント
企業、学校、団体にとって節目の年に発行する「記念誌」は、単なる記録集ではありません。それは、過去の歴史を振り返るとともに、現在の価値を共有し、未来への指針を示すための軌跡です。
しかし、「いざ作るぞ!」となっても、何から手をつけて良いか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?
このブログ記事では、記念誌制作の流れと、読者の心に響く記念誌にするための成功のポイントを解説します。
そもそも「記念誌」とは?その役割と種類
「記念誌」とは、創立○周年、開校○周年、事業○周年といった、企業や団体における特別な節目の年を記念して発行される冊子のことです。
記念誌の主な役割
記念誌には主に3つの役割があります。この役割を意識しながら、発刊する記念誌のイメージを膨らませていきましょう。
歴史の保存と継承

記念誌は歴史の記録です。創業時からの道のりや苦労、達成した偉業を未来へ正しく保存し、後世に伝えます。
過去から現在に至るまでの歴史を深く知ることは、従業員に対してルーツと誇りを再認識させ、帰属意識の醸成にも役立つツールになります。
関係者との絆を深める

従業員、卒業生、取引先など、これまで関わった全ての人々へ感謝の気持ちを伝えるとともに、歴史を振り返り共有することで、チームとしての一体感を醸成します。
ブランド力の向上

誌面を通じて、企業や団体の理念、文化といった無形の価値を明確に伝えます。顧客や取引先に対しても、感謝とともに社会的な信頼を高めることができるツールです。
「記念誌」と「社史」の違い
「記念誌」と並んで耳にする言葉に「社史」があります。どちらも企業の歴史や歩みをまとめる冊子という点では共通していますが、「何のために作るか」という目的と、「何を優先的に載せるか」という内容の自由度に大きな違いがあります。
記念誌
記念誌は、創立○周年という「記念すべきタイミング」に、社内外に向けて感謝を伝え、祝うことが主な目的です。
関係者に対し、これまでのご愛顧への感謝を伝える役割があり、過去の振り返りだけでなく、現社長のメッセージ、若手社員の対談、今後の事業ビジョンなど「現在の熱意と未来への展望」を重点的に盛り込むことができます。
「社史」のように歴史年表がなくても、記念イベントの記録や社員の寄稿文だけでも成立します。読み手の感動やブランディングツールとしての使用も想定されるため、編集の自由度が高いのが特徴です。
社史
社史は、その名の通り「会社の歴史」を体系的に記録し、後世に伝えることを最大の目的とします。
史料的価値として過去の経営判断や事業の変遷を客観的なデータや資料に基づいて詳細に記述するため、「会社の公式な記録」としての意味合いが非常に高いです。
新入社員研修や経営企画の資料として利用される側面もあるため、年表や事業報告が中心となり、感情的な要素よりも事実の正確性が最優先されます。
記念誌の主な構成要素
編集の自由度が高い記念誌ですが、発刊の目的に応じてさまざまな要素で構成されます。ここでは、主だったコンテンツをご紹介します。
| 要素 | 内容例 |
|---|---|
| 記録 | 年表、歴代役員の紹介、事業の変遷、在籍メンバーの写真、各種資料など |
| 回顧 | OB・OG・現役メンバーへのインタビュー、思い出の写真集、座談会など |
| 展望 | 代表者メッセージ、未来ビジョン、社員からのメッセージ(アンケート)など |
| 文化 | 社歌・校歌、イベント記録、クラブ・サークル活動、啓蒙活動や社外活動の紹介など |
成功する「記念誌の作り方」制作の5プロセス
「記念誌の作り方」を具体的に知りたい方のために、企画から編集・印刷・完成まで、スムーズな流れとなる5つのプロセスをご紹介します。
プロセス1:企画立案と制作体制の確立
まずは、記念誌の「目的」「ターゲット」「予算」「納期」を明確にします。
・誰に伝えたいか?(例:社内向けか、社外向けか)
・制作の目的は?(例:社員教育、歴史の継承、プロモーションツール)
・全体のボリュームと予算は?(ページ数、部数、印刷方法)
・制作スケジュールは?(節目となる日に間に合わせるための逆算)
特にしっかりとボリュームのある記念誌を目指す場合には、主体となる企画制作チームの編成も必要です。企画、編集、執筆、校正、デザイン担当者を明確にしておきましょう。
また、このタイミングで印刷会社・制作会社との連携窓口も決めましょう。
プロセス2:コンテンツの収集と構成案の作成
記念誌の骨格となる「構成案(目次)」を作成します。プロセス1で決定した方針に基づいて、読者が読みやすいように時系列、テーマ別など論理的な構成を組みます。
構成案が決まったら、原稿を作成するために必要な材料を収集します。
・資料収集:写真、文書、過去の刊行物、年表などの基礎資料を徹底的に集めます。
・取材、原稿執筆:インタビュー対象者の選定、原稿の依頼・執筆を進めます。
プロセス3:デザイン制作と編集作業
原稿や写真が集まったら、企画意図に沿って誌面に落としこんでいきます。
・デザイン:表紙のコンセプト、本文のレイアウト、使用するフォントなどをデザイナーと打合せして決定します。主な読者を想定しながら、相手が「読んでみたい!」と思うようなデザインにすることが重要です。
・レイアウト:原稿と写真を配置し、視覚的に訴える誌面を作成します。
・本文の編集:統一感のあるトーンで文章を整えます。場合によってはライターに依頼する場合もあります。
プロセス4:校正・最終確認(誤りをなくすための重要作業)
組みあがった紙面に、誤字脱字や事実誤認、写真のキャプションなどの間違いがないかを徹底的にチェックします。
・初校、再校、念校を複数回にわたって、制作チーム全体で確認を行います。特に年表や人名、役職名などは細心の注意を払ってください。
★校正のコツを、こちらの記事でご紹介しています。
・印刷会社との連携:印刷会社と打ち合わせを行い、仕様を決定します。必要に応じて事前に記念誌の仕上がりイメージや紙の質感の確認、色校正を行います。
プロセス5:印刷・製本・納品
最終データを印刷会社に入稿し、いよいよ形にします。
・紙の選定:記念誌の格調高さや耐久性を考慮し、最適な用紙を選びましょう。(上質紙、コート紙、特殊紙など)
・製本・加工方法:無線綴じ(一般的な冊子)や上製本(ハードカバーで高級感がある)など、予算と目的に応じて決定します。高級感を与える箔押しや空押し、ハードカバー付などが選ばれるケースも多くあります。
★製本の種類について、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
「いつから」始めるべき?納期から逆算したスケジュール

記念誌の制作は、一般の出版物よりも長い準備期間が必要です。
発行のタイミングについては、基本的に企業の歴史上重要な「節目」に合わせて発行されるケースが多いですが、発行をあえて遅らせ、節目の式典やイベントも記念誌に掲載し、より内容を充実させるケースも増えています。
またデジタル化が進んだ現代では、テキストベースの資料は紙媒体で、画像ベースの資料は電子媒体でアーカイブ化するなど多様化が進んでいます。
納品目標日から逆算した、制作スケジュールの目安がこちらです。
| ステップ | 目安期間 | 主な作業内容 |
|---|---|---|
| ステップ1 企画・準備 |
2ヶ月 | 目的、ターゲット、予算、制作チーム体制の確立。 制作・印刷会社の選定。 |
| ステップ2 資料収集・取材・撮影 |
3~4か月 | 過去資料の収集、OB・関係者への取材・撮影、年表作成、写真選定など。 |
| ステップ3 原稿執筆・編集 |
1~2ヶ月 | 原稿の依頼・執筆、写真キャプション作成。 |
| ステップ4 デザイン・レイアウト |
2ヶ月 | 誌面デザイン決定、DTP(データ制作)作業。 |
| ステップ5 校正・最終確認 |
1ヶ月 | 誤字脱字、事実誤認など誌面の徹底チェック(初校→再校→念校)。 印刷仕様の決定。 |
| ステップ6 印刷・製本・納品 |
1ヶ月 | 印刷データ入稿、印刷、製本、納品。 |
取材や資料収集を伴う場合、節目となる日の最低でも10ヶ月前、理想は1年前からプロジェクトを始動させることをお勧めします。
そして、「原稿執筆」や「校正」は予想以上に時間がかかることが多い工程です。特に関係部署や役員の確認が必要な場合、上記スケジュールに加えて、余裕を設けておくことが納期遅れを防ぐポイントになります。
記念誌を単なる「記録」に終わらせない4つのポイント
時間と予算をかけて発刊する記念誌。単なる記録集で終わらせず、関係者に「作ってよかった、もらってよかった」と感じてもらう記念誌に仕上げるためのポイントを紹介します。
ポイント1:テーマ(一貫したコンセプト)を貫く
「感謝を伝える」「未来への挑戦」「地域との共生」など、記念誌全体を貫くメインテーマを設定しましょう。これにより、全てのコンテンツに一貫性が生まれ、強いメッセージとなって読者に届きます。
ポイント2:人の「想い」と「エピソード」を中心に据える
年表やデータは必須ですが、それだけでは無機質です。
・OB・OGの苦労話や感動的なエピソード
・現役社員の熱い思いや未来への夢
こうした「人」にまつわる物語や感情を丁寧に引き出すことで、誌面に温かみが生まれ、読み手の心に深く響きます。
ポイント3:印刷のプロの知恵を最大限に活用する
予算内で最高の仕上がりを実現するために、印刷会社を単なる「発注先」ではなく「パートナー」として活用してください。
印刷会社では、下記のような点で特別な記念誌を満足のいく仕上がりにするサポートが可能です。
・紙の提案:高級感を出すための紙質や特殊加工(箔押しなど)
・写真補正:古い写真や解像度の低い写真を美しく見せる技術
・仕様の確定:印刷方式や加工、部数に応じた最適な方法の提案
ポイント4:社内外へのブランディングとして活用する
記念誌は、単なる過去の記録ではありません。それは、社内外に対する強力なコミュニケーションツールであり、未来の成長に向けてのブランディング投資とも言えます。
インナーブランディング効果
記念誌の制作を通じて、「この会社は何を大切にしてきたのか」「どういう挑戦をしてき たのか」という企業のアイデンティティ(らしさ)が明確になり、社員一人ひとりの行動基準となります。
困難な時代を乗り越えてきたストーリーを共有することで、社員が自分の仕事や会社に対して持つ誇り(エンゲージメント)を大きく高めます。
アウターブランディング効果
記念誌を通じて、データや製品情報だけでは伝わらない、「理念」や「文化」といった競合他社には真似できない深い歴史と価値を対外的に伝えることができます。
記念誌の発行をきっかけに、業界紙や一般メディアでの紹介につながり、露出の機会が増えるケースもあります。
記念誌は「未来への投資」です
記念誌制作は、手間も費用もかかりますが、完成した一冊は、組織のアイデンティティを確立し、次の10年、50年、さらなる未来を支える強力なモチベーションになります。
貴社の素晴らしい歴史を、最高の形で刻むお手伝いをさせていただけませんか?
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