パッケージデザインとは?商品の魅力を伝えるポイントやデザインアイデア
パッケージが素敵で、つい購入してしまう「パケ買い」、皆様は経験がありますか?
さまざまな商品が溢れ、店頭だけでなくオンラインショップでも自社商品を魅力的に表現する必要がある現代において、商品の購入意思決定に際してパッケージが果たす役割は大きいものです。
本記事では、パッケージデザインが果たす役割と制作プロセスついて詳しく解説、また、具体的なパッケージデザインのアイデアもご紹介します。
新商品のパッケージや既存パッケージのリニューアルをご検討中の開発担当者様にとって、デザイン検討の一助となれば幸いです。
パッケージデザインの4つの役割
はじめにパッケージデザインの役割について考えてみましょう。パッケージ自体は中身の商品を保護するため、物理的に必要なアイテムですが、同時にそこに施されるデザインは商品について正しく消費者に伝え、その魅力を最大限に引き出す重要な役割を担っています。
ここではパッケージの役割を4つに分けて解説します。
商品の情報を正確に伝える
まず基本的な役割として、商品情報を消費者に正確に伝える役割があります。
原材料、栄養成分表示、内容量、アレルゲン情報、賞味期限、そして正しい使用方法といった情報は、消費者が安心して商品を購入・使用するために不可欠です。これらの情報を分かりやすく、正確に記載することは、法的要件を満たすだけでなく、ブランドに対する信頼を築く上でも極めて重要です。
売り場で目を引き、手に取られるきっかけに
店頭に並んだ膨大な数の商品の中から、消費者の目に留まるためには、第一印象が非常に重要です。パッケージデザインは消費者との最初の接点であり、関心を瞬時に惹きつける役割を担います。
他の商品とは異なる魅力的な色使いやユニークな形状、目を引くイラスト、フォントなどを採用することで、消費者が商品を手に取るきっかけを作り出すことができます。
その際、単に目立つだけではなく、商品の利用シーンやターゲットにマッチしたパッケージデザインであることで、より購入に至る確率が高まるでしょう。
商品コンセプトやブランドの信頼性を伝える
パッケージはブランドの顔であり、いわば「無言の営業マン」です。デザインの品質や素材感は、そのまま商品の品質やブランドの信頼性を象徴します。
例えば、高級感を演出するマットな質感や箔押しなどの特殊加工、環境への配慮を示す再生紙の利用とエコラベルの表示などは、ブランドの価値観を消費者に伝え、ブランドイメージを形成します。
たとえ商品の内容が直接見えない場合でも、パッケージから伝わる印象が、消費者の「このブランド・商品は信頼できそうだ」という安心感につながります。
購入後のユーザー体験を向上させる
パッケージの役割は、購入までで終わりません。開けやすさ、持ち運びやすさ、保存のしやすさといった利便性は、購入後のユーザー体験を大きく左右します。
例えば、再密封可能なジッパー付きのパッケージや、握りやすい形状のボトルは、商品の使い勝手を向上させ、消費者の満足度を高めます。
また環境意識の高まりとともに、使い終わった後のパッケージの分別・廃棄のしやすさも意識されるようになっています。
また、パッケージに書かれた「美味しい食べ方」や「利用シーン」などのプラスαの情報は、商品をより深く楽しむためのヒントとなり、ブランドへの愛着を育むことにもつながります。
魅力的なパッケージデザインをつくるプロセス
続いて、消費者にとって魅力的なパッケージデザインを作り上げるために踏むべきプロセスを、手順に沿ってご紹介します。ここでは、商品開発担当者様とパッケージディレクターまたはデザイナーが意見を出し合いながら各プロセスを進めていくことで、最終的に商品の魅力を十分に伝えるパッケージに仕上がるはずです。
①目的とターゲットの明確化
デザイン制作を始める前に、まず「誰に、何を伝えたいか」を明確にすることが不可欠です。とはいえパッケージを検討する際には中身となる商品が先にあるはずですので、その商品を誰に、どのように訴求したいかを改めて明確にしていくフェーズだと言えます。
ターゲット選定に際しては、商品の主な購入者はどんな人か、仮想の購入客として「ペルソナ」を設定するのがおすすめです。年齢や性別、仕事、ライフスタイル、価値観などを具体的に設定することで、その人が好みそうなパッケージを具体的にイメージしやすくなります。
同時に、卸売業者や小売店のバイヤーにとっての魅力(目新しいか、棚に並べやすいか、分かりやすい表示か)も考慮します。
また、「月に○個の売上を達成したい」「ライバル商品と同等の知名度を作りたい」「既存の購買層よりも若い世代が買いたくなる商品にしたい」など、パッケージデザインによって何を達成したいのか、目的を定義します。特に既存商品をリニューアル変更する場合、パッケージデザインの変更で何を目指すのかは非常に重要です。
②市場調査と競合分析
よほど革新的な商品でない限り、あらゆる商品には必ず競合が存在します。デザインのアイデアを固める前に、市場の現状や競合商品について理解することが重要です。
ネット上や店舗での調査により、業界全体のトレンド把握や競合商品のパッケージデザイン分析を行うことで、最終的に自社商品が市場でどのような立ち位置にあり、競合とどのように差別化できるかが明確になるはずです。
③デザインコンセプトの決定
ここからは具体的なデザインのアイデア出しに入ります。
ステップ①と②で得られた情報を基に、デザインの核となるコンセプトを策定します。例えば「創業100年の老舗がつくる昔ながらのおせんべい」「赤ちゃんもママも一緒に使える日焼け止め」など、競合と差別化できる自社独自のポイントを押さえながら、ターゲットに対して訴求したいメッセージを明文化しましょう。この段階で、必要に応じてコピーライターと連携しながらキャッチコピーを決定するのもおすすめです。
④デザイン案の作成
コンセプトが決定したら、コンセプトに沿ったデザイン案を作成します。この段階では、色やフォント、レイアウトなど複数のデザイン案を出すことで比較検討しやすく、納得できるデザインにたどり着くことができるでしょう。どのデザインを購入したいと感じるか、社内外でアンケートを実施するのも効果的です。
既に同じブランドで複数の商品がある場合には、そのブランドとしての統一感も重要になります。ブランドの商品群の中でどのような位置づけの商品かによって、目新しさと一貫性のバランスを考えてみると良いでしょう。同じブランドで棚に並べてみるのもおすすめです。
また見た目の印象はもちろん、配送のリスクや陳列方法、消費者の利便性や視認性もしっかり考慮して設計することも大切です。
⑤プロトタイプの作成
デザイン案が固まったら、実際に形にした試作品を作成して検証します。実際に組み立ててデザインが立体になったときの見え方や、中に入れる商品の収まりなどを確かめます。特に中の商品がきちんと収まっているかどうかは、数ミリの調整で改善できる可能性がありますので、量産の前にきちんと確認しておきましょう。
また、開けやすいか、取り出しやすいか、捨てやすいかなど、パッケージとしての使用感もこのタイミングで確認しておきましょう。
見た目と形状がすべて満足できる仕上がりになれば、いよいよパッケージデザインが完成、量産体制に入っていきます。
成功するパッケージデザインのポイント
成功するパッケージデザインに欠かせないポイントを3点、ご紹介します。
ターゲットを明確に
パッケージデザインをつくるプロセスの①でも触れましたが、はじめにその商品を誰に届けたいか考え、ターゲットを明確にすることが大切です。ターゲットによって、刺さるデザインが明確に変わってくるからです。
ターゲットの年齢層、性別、ライフスタイル、価値観などを深く理解することで、届けたい人の心に響くデザインを生み出すことができるでしょう。
例えば、若い女性向けの商品であればその時のトレンドを取り入れたデザインが、健康志向の高齢者向けであれば分かりやすい情報と落ち着いた色使いが効果的でしょう。
伝えたいことを絞ったミニマルデザイン
多くの商品が溢れる現在、競合商品との差別化を図る上でもパッケージは欠かせません。例えばチョコレートがいくつも並んでいる中で、ユニークな形状や素材、目を引く色使いのパッケージがあれば、消費者は自然とそちらに興味を惹かれます。
差別化を図る上で気を付けるべきことは、伝えたいことを盛り込みすぎて最も伝えたいことが埋もれていないか、常に振り返ることです。
複雑なデザインはユニークに受け取られる場合もありますが、かえって分かりにくく敬遠されてしまう可能性もあります。「Less is more(より少ない方が、より豊かである)」という考え方があるように、余計な要素をそぎ落とすことで、本当に伝えたいメッセージを際立たせることができます。あくまでもブランドのコンセプトや最も伝えたいメッセージを前提に、それらを落とし込んだシンプルなデザインを検討することで、消費者の記憶に残りやすくなるでしょう。
サステナビリティへの配慮
近年、サステナビリティ(持続可能性)への意識が高まっています。環境に配慮した包装形態、素材の利用や、リサイクルしやすいデザインは、消費者にポジティブな印象を与え、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
特にナチュラルな素材にこだわった商品のパッケージなどとして親和性が高いでしょう。
サステナブルなパッケージの実現方法としては、エコ素材への変更や軽量化・簡素化、再利用可能な設計への変更などが考えられます。
【シーン別】魅力的なパッケージデザインのアイデア
ここまでパッケージデザインの役割や成功するためのポイントについて考えてきました。続いてこのセクションでは、具体的なシーンを想定して、魅力的なパッケージデザインのアイデアを考えてみます。
老舗和菓子屋が若い顧客層をターゲットとするパッケージのリデザイン
老舗ブランドが新たな市場で成功を収めるためには、リブランディングの一環としてパッケージデザインを刷新する場合があります。伝統的な価値観と現代的な感性を融合させることで、新しい顧客層にアピールしつつ既存のファンにも安心感を与えることができます。
<想定シーン>
これまで40代以上がメイン顧客であった老舗の和菓子屋さんがより若い30代以下の女性に、プチギフトや自分用の「ちょっといいおやつ」として商品を手に取ってもらいたい
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形状: シンプルな紙のスリーブや手のひらサイズの小さな箱などの個包装にすることで、自分用やプチギフトとして1個からでも購入しやすくなります。サイズ感が可愛らしく、バッグに入れてもかさばらないのも嬉しいポイントです。
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配色: 若い世代に好まれるくすみ系のカラーを、商品のフレーバーから着想を得て活用(餡子を連想させるくすみピンク、抹茶を連想させるセージグリーンなど)。またアクセントとして箔押しや空押しで上質さを演出することもできます。
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書体: 明朝体や細めのゴシック体など、伝統的でありながらモダンな印象を与えるフォントがおすすめです。商品名に英語も併記すると、洗練されたイメージを強調することができます。
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素材: 和紙のような質感の紙や、半透明のトレーシングペーパー、クラフト紙など、手触りの良い素材を選ぶと、モダンな印象に仕上がります。中身が見える窓を設けることで、商品の形や焼き色そのものをデザインの一部として見せるようなギミックも効果的です。
地球にやさしい素材にこだわった製品のパッケージ
SDGsやエコにこだわった商品、せっかくならパッケージでもそのこだわりを表現したいですよね。外観から分かりやすくこだわりを表現することで、ターゲット層に選ばれやすくなります。
<想定シーン>
フェアトレード&オーガニックコットンを使用した高級靴下のパッケージを、エシカルな消費行動を心掛けているユーザーに選ばれるデザインにしたい
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形状: 靴下そのものの質感を触って確かめることができる窓あき形状、かつ高級靴下ということで、母の日や誕生日などのギフトにもなるようなボックス入りにします。
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素材: 再生紙や古紙など、温かい風合いのエコな紙素材がコンセプトとマッチします。通常靴下についているようなプラスチックや金属の留め具は一切使わず、タグやリボンにも麻紐などの天然素材を使用するなど、サスティナビリティへの配慮を徹底するとより良いでしょう。
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デザイン: 紙素材の温かみを生かしたシンプルなデザインに、靴下を履いた足元やコットン畑、地球など、やわらかいタッチのイラストをワンポイントで使用しすることで、サステナブルなイメージが視覚的に伝わりやすくなります。
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メッセージ性: 外装はシンプルな分、パッケージの内側に靴下ができるまでのストーリーや生産者・作り手のメッセージなどを記載することで、ブランドに対する信頼や商品への愛着を高めることにつながるでしょう。
特別なギフトを贈る特別なパッケージ
特別な贈り物を選ぶ際、心に残る体験を提供するためには、商品そのものだけでなく、それを包むデザインにもこだわりが必要です。開封時の驚きや喜びも演出できれば、一生忘れられない思い出になるでしょう。
<想定シーン>
高級コスメブランドから周年記念としてリリースされる香水のための特別なパッケージを考案したい
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加工: 高級感と特別感を演出するために、パッケージの表面にレーザー加工でレースのような繊細なカットを施します。香りをイメージした植物の葉や花、幾何学模様などを、中の商品がわずかに見える透かし彫りのように切り抜くことでアート作品のようなパッケージに仕上げます。
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カラー: 例えば夜をイメージした香りなら深いブルーやダークグレー、朝をイメージした香りならペールピンクやオフホワイトなど、香りのイメージに合わせたカラー選びで世界観を伝えます。パール調の紙やラメが入ったキラキラと輝く紙などを使用すると、いっそう高級感を演出することができます。
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開封体験: レーザーカットで商品がわずかに見えている扉を開くとボトルが現れます。香りのイメージにもよりますが、例えばボトルのラベルや箱の中の色に外装と反対色を使うと、より鮮烈な印象を与えることもできます。ボトルの下には、香りに込められた物語やインスピレーションを印刷すれば、香りを体験する前から、その世界に深く没入できます。
まとめ
パッケージデザインについて、インスピレーションを膨らませていただけたでしょうか?
具体的なアイデアもご提示しましたが、売り出す商品ごと・届けたい相手ごとにぴったりのデザインがあるはずです。YPGではデザイナーの発想と多彩な印刷加工技術を組み合わせて、より魅力的なパッケージデザインをご提案させていただきます。
パッケージの新規作成、リデザインでご相談の際には、ぜひ下記フォームよりどうぞお気軽にお問合せください。