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初めての自社ブランド「吉田次作商店」立ち上げレポート~前篇

YPGは従来、法人のお客様とお取引を主に行ってきた「BtoB企業」でしたが、2023年6月からはじめての一般消費者向けオリジナル紙ものブランド「吉田次作(よしだじさく)商店」をリリースしました。

今回は手前味噌で恐縮ですが、このブランドを立ち上げた経緯や、立ち上げから半年ほど経った現在の活動状況を前篇・後篇の2回に分けてレポートさせていただきます!

前篇の今回は、ブランドについて少しご紹介させていただき、ブランドリリースまでの誕生秘話をお話しようと思います。
ひとつの体験記として、今から新しい事業を立ち上げられる企業様の参考にしていただければと思います。

吉田次作商店について

"ふだん使う「紙」だから、ナチュラルに暮らしにとけ込む。
ふだん使う「紙」だけど、見たことない表情、個性的なテイスト。

日々を彩る、エシカルであたらしい紙もの雑貨を、創業110年を誇る老舗印刷会社がお贈りします。"

わたしたちは、こんなコンセプトを掲げてオリジナルの紙もの文具・雑貨を作らせていただいています。

1906年に紙の卸商として創業した弊社ですが、2代目に代替わりした1922年から1967年までは「吉田次作商店」の屋号で経営していました。
初代から2代目に引き継がれた「吉田次作」の名を冠したブランド名には、創業当時から今まで、時代の変化に合わせながらも常に「紙」を生業としてきた精神を受け継ぐ意味を込めています。

ペーパーレスの時代に紙ものを発信する意味

先に述べたコンセプトからも、このブランドの軸は「紙」であることを感じていただけるかと思います。
でも、こんなペーパーレスの時代に紙にこだわる意味は?と聞かれることも。

かく云う筆者も、例えば仕事のほとんどの時間は紙ではなくパソコンのモニターとにらめっこする毎日です。紙にプリントアウトする機会も書き込む機会も、以前と比較して減っているように感じます。

ペーパーレスが取りざたされて久しい今、これはむしろ良いことだと思っています。紙は、森林からつくられた貴重な資源だから、使わなくて済むなら使わないで環境を守っていく。ふだんから地球に、社会に貢献できる、ミニマムな取り組みですよね。
皆様もきっと大小はあれど、紙を使う機会が減っているのではないかと思います。

ですが一方で、モノとしての「紙」の魅力が忘れ去られてしまうのは、長年紙を生業にしてきたわたしたちとしては、エゴかもしれませんが、あってはならないことだとも感じます。
例えば、相手を想って書いたり(描いたり)、ドキドキしながら手渡したり、一緒に切って貼って作り上げたり。
紙は、目の前にあって形に残る「アナログ」なものだからこそ、そんなワクワクする思い出や体験をもたらす力もあります。

もうひとつ、ペーパーレスの時代とはいえ、わたしたちは印刷会社なので紙を使って製品をつくります。
その過程では、環境に優しい印刷方法を採用したり、できるだけ使用する紙枚数を減らすなど環境負荷を考えた取り組みを行っていますが、ムダを完全にゼロにできるわけではありません。

特に紙については、規定のサイズにカットした端が余るのでそのまま廃棄されたり、包装単位でしか紙が仕入れられず、必要な枚数以上に仕入れて余ってしまったりと、「もったいない紙」がどうしても発生します。
このような「もったいない紙」たちを無駄にせず、最大限に活用するべきではないかと、印刷会社の使命として考えました。

「ペーパーレスの時代ではあるけれど、紙の良いところは世の中に向けて発信し続けたい」「印刷会社として、より環境負荷の少ない方法で社会に貢献したい」。
そんな想いから、創業と同じ日、2023年6月1日に、吉田次作商店は誕生しました。

ブランド立ち上げからリリースまで

きっかけは、ひとつの印刷技術開発でした

そもそも、新しい事業のきっかけになったのは、遡ること2022年の夏。ヨシダ印刷の生産部が考案したひとつの印刷技術でした。

スライド-物語はつづく.jpg

こちらの写真に写っている印刷面、表面にでこぼことした凹凸があるのがお分かりいただけるでしょうか?
これは、複数回インキを重ねて印刷することによって、でこぼことした手触りを表現することができる印刷手法です。「デコプリントKasane」と名付けられました。

さて、この新技術リリースにあたって、せっかく開発したからにはただサンプルを作成するだけじゃもったいないよね、という話に。
実は弊社、他にもいろいろな特殊印刷加工の技術はあるのですが、それを既存のお客様以外の世の中にPRしきれていないことも課題を感じていました。
あわせて当時「YPG」というグループブランドを掲げ始めたばかりで、これを機に新しいことに挑戦したいというという雰囲気も強まっていました。

そんな中でいろいろな手法を社内で話し合った結果、「思い切って一般向け商品を開発して、クラウドファンディングに挑戦しよう!」という一大プロジェクトが生まれました。

デコプリントKasane 特設サイトはこちら

クラウドファンディングへの挑戦

と、いうことで、クラウドファンディングに挑戦することになった私たち。商品についてもさまざまな案が出ましたが、「デコプリントKasaneを使った、かつ自社にしか作れないものを」ということで、当社が「吉田次作商店」の屋号で営業していた昭和20年代に販売し大ヒットした「童話ノート」を現代にリメイクすることになりました。

そして、思いを込めた製品販売のプラットフォームとして合っていそうだと感じた「アタラシイものの応援購入サイト Makuake」で応援購入を募ることに決めました。

自社で商品の企画~開発、物販までを一貫して行うのは初めての経験でしたが、創業からの歴史、ペーパーレス時代への挑戦、開発の想いなど、お伝えしたいことは溢れに溢れ、何度も推敲を重ねて2022年10月31日、ついにプロジェクトを公開。

童話ノートTOP案20221018.png

「童話ノート」プロジェクトページはこちら

ありがたいことに、プロジェクトは目標金額を達成して無事に成功!
北は北海道から南は九州までと全国のお客様からご購入いただき、ネット販売のパワーを強く感じました。既存事業ではエンドユーザー様からの声をお聞きできる機会もなかなかありませんでしたが、「届くのが楽しみです」「プレゼントにします」といったコメントをいただくたびに舞い上がりそうなくらい嬉しかったです。
また石川テレビ様に取材いただくなど、地元メディアにも注目いただきました。

プロジェクト目標達成!次はどうする...?

さて、無事にプロジェクトが目標達成して終了したのが2022年12月。安心したのもつかの間、次の一手をどうするかが次なる課題です。

一定の手ごたえを感じはしたものの、製品は「童話ノート」オンリー。ブランド自体の再検討や製品ラインナップ、販売経路など、一般向け製品の販売も初めての試みである私たちの前には、決めなくてはならないことが山積みでした。

それでも、ここで新しく新規D2C事業を立ち上げることについては、きっと自社にとってプラスの効果をもたらしてくれるはずだと関わったメンバーみんなが感じていました。
印刷物の多くはお客様の「こんなものが欲しい」という声を反映してつくる「受注生産品」ですが、自社の強みを生かして自ら製品を開発することは、社内の技術やノウハウを高めたり、お客様へのプラスαのご提案につながるだろうという期待が、次なる一歩に踏み出す原動力になりました。

そこでまず、社内からブランド立ち上げのためのプロジェクトメンバーを選出。
クラウドファンディングの時点では老舗の紙商としての歴史や、過去に全国でヒットしたノートのリメイクという製品自体の特色を重視していましたが、改めて「老舗の印刷会社が紙ものブランドを立ち上げる意味」を考えました。
その上で、ふだん何気なく使う紙にもいろいろな種類や特徴があったり、加工方法によって紙だとは思えないような姿かたちに生まれ変わることを知っていただけるような、新しい発見のある紙ものを発信していくことに。冒頭にお話させていただいたコンセプトにまとまりました。

同時に、ブランドのリリースを創業記念日である6月1日に決定。
そこからはリリースの日まで製品と、唯一の販売チャネルとなるECサイトのオープンに追われ、まさに一気に駆け抜けました。

メンバーで「紙ならでは」な製品の候補を出して、どんな製品にするかを検討して、試作して、ブラッシュアップして...の繰り返し。開発の過程で今まで知らなかった材質や加工方法にも触れる機会があり、現在進行形で本当に勉強になっています。そして皆で良いものを作り上げようと話し合いを重ねるのは、苦しくもありますがそれ以上にとっても楽しい時間でした!

初期の製品ラインナップは「童話ノート」「童話クリップ」「ハンドサインクリップ」の3種類。

そうして満を持して6月1日、ついに吉田次作商店が復活したのです!
が、その後も挑戦の日々は続きます...。

次回・後篇につづく...

「吉田次作商店」ECサイトはこちら

  

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